October 04, 2004
武満徹全集 第5巻
小学館から「武満徹全集」と銘打ったCD58枚組からなる巨大なセットが発売されている事はご存知の方も多いかと思いますが、この最終巻に当たる第5巻はとりわけ興味深い内容となっています。
いわゆる「シリアス」なスタイルのオーケストラ曲や室内楽曲以外に映画音楽などのポピュラーな分野での活躍は良く知られていますが、その他のポピュラー音楽の分野での活動もかなりあってこの巻ではそうした方面の仕事やミュージック・コンクレート作品などの極めてレアな作品が14枚のCDにまとめられています。具体的には、ポピュラー・ソング、舞台、ラジオ、TV、ドキュメンタリーのための作品、放送用バック音楽、補遺というテーマで分類されそれぞれが作曲年順に並べられています。
初期の劇団四季のためにかなりの作曲をしていることにびっくりしますけど、バリバリの武満サウンドだったりしてもっとびっくりします。様々なTV番組や舞台などのために作曲したものはジャズのハーモニーやモリコーネ流の耽美的で洗練された響きが印象的ですけど、やっぱりタケミツ・サウンドでにんまりしてしまいます。
「翼」や「島へ」などポピュラー・ソングとして知られている曲のサントラとしての楽器で演奏されたヴァージョンもとても興味深いです。「翼」のメロディーがジャズ・ピアノやストリングスなど様々に形を変えて出てきますけど、あまりの美しさに「胸キュン」状態(笑)になってしまいます。
いわゆるサントラものなので断片的な曲が多いのですけど、逆にそれが彼のメロディーやハーモニーの嗜好を浮かび上がらせる形になってとても興味深いのです。
そして一番目を引くのがCD2枚分にわたるテープ音楽の部分でしょう。彼の初期に制作したミュージック・コンクレートが全曲収録されていますが、これは電子音楽ファンには涙ものでしょう。
「ヴォーカリズムA・I」「水の曲」などの一連のミュージック・コンクレート作品は現在の耳から聴いても非常に斬新ですし、その完成度は世界的レベルで考えても非常に高いといえますが、ラジオ・ドラマのために作曲した作品もこれらの作品とまったくひけをとらないのにも驚かされます(ラジオのために遣った素材からミュージック・コンクレート作品にまとめられた例もあるので、このことは当然とも言えます)。
ラジオ・ドラマのサントラが全部ミュージック・コンクレートという、今の常識では絶対に考えられないような斬新なことをやっているのですが、セリフも音楽も不可分な作品として出来上がっていて、この系統の仕事は再評価が高まってくるのではないか、と思います。
電子音楽ではなくてミュージック・コンクレートというのがポイントで、この作曲素材の選び方が武満の音楽感性と非常に相性がよく、音楽に非常に肉感的で瞑想的な性格をもたらすことに成功しています。
最後の補遺には最近発見された再初期のピアノ作品などが収められていていますが、個人的に気に入ったのはその後に収められた「枯葉」を武満が弦楽四重奏にアレンジしたものとジム・ジャームッシュに依頼されて作曲、録音したにも関わらず「画が音楽に負けてしまう」という理由でボツになってしまった映画のサントラ(この音楽は「系図」に再利用されることになります)の2つでしょうか。
私はいわゆる「武満マニア」の類ではないのですが、思わずこの高価なセットを買ってしまったくらいに非常に興味深い内容ですので興味のある方は購入を検討してみては如何でしょう。
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武満徹全集 第5巻 (5)武満徹全集

武満のテープ音楽、聴きたいですが、お値段が・・・・
武満といえば、妻の友人が入っている合唱団がコンクールに出たときに、全出場団体の4割くらいが、武満の「死んだ男の残したものは」を歌ったそうです
りろ@涅槃 : October 4, 2004 08:43 PM解説は450ページの非常に充実したものです。
たしかに高いですけど買って納得の内容です。
他の巻も欲しくなってきました。。。
ところで、武満徹の合唱曲って気楽にやるところも多いですが相当難しいです。。
大体が和音がカオス状態になってしまってます。