June 07, 2006
Hermeto Pascoal & Aline Morena: Chimarrão com Rapadura
70歳のエルメート・パスコアルが40歳以上年齢の離れた新妻アリーネ・モレーナと組んだデュオ・アルバムの新作はかなり大変です。98%二人だけの演奏ですが、数え切れないくらい大量の楽器を駆使しての多重録音に驚かされます。ミキシングも含めて相当細かい仕事をしていることが見受けられますが、音を重ねている割に「隙間」も多く残しているところが独特です。ヴォーカル・パートも多重録音を駆使する事によって最大10声以上の分厚い響きを作っていますが、マニアックなまでに複雑な和声による多重録音コーラスは聞き物です。
ブラジル音楽を基調にして、調性から無調性、楽音からノイズ、規則性と不規則性の領域を自由自在に行き来しますが、全体を覆う「音楽的躁状態」が印象的です。
エルメートの天才的な音楽性は良く知られていますが、親子くらいに歳の違うアリーネがエルメートと対等に渡り合っているのも驚異的です。音楽的な相性もぴったりでエルメートの狂気がそのままアリーネに乗り移ったような印象を受けます。
このアルバムはCDとDVDの両フォーマットで発売されていますが、実はDVDが素晴らしいです。
(ジャケット画像が発売元へのリンクになっています)
スタジオでの多重録音の風景を映像にも収めていて、このDVDではそれぞれのテイクの映像が組み合わされて音源と結びつけられているのです。幾重にも多重録音が行われている場面ではエルメートやアリーネが画面中で増殖するような効果も面白いですし、どのように多重録音が行われているのか資格で確かめる事も出来ます。
アリーネの狂った演奏っぷりもおかしいですし、体中に大量の紙コップ、カスタネットなどをくっつけてタップしながら音を出す無理矢理ぶりにも唖然とします。スタジオに水を張ってのウォーター・ドラムや変な鳴き声のするぬいぐるみ、マウスピースを取り付けたヤカンの演奏映像などが、通常の楽器の演奏の映像と組み合わされるのも痛快です。
圧巻はアリーネがモーツァルトの「夜の女王のアリア」を歌うところでしょう。非クラシック的なアプローチでこの難曲をエキセントリックに歌う様もものすごいですが、モーツァルトの原曲とは全く関係のないフリー・ジャズ的なピアノの多重録音によるエルメートの演奏が刺激的です。
ちなみにこの曲で夜の女王の雰囲気を出すためか、アリーネが黒いマントを羽織って演奏しているのがユーモラスです。
どうでもいいことですが、演奏中のエルメートの寄り目が気になります(汗
まっちゃん@シリウス : June 7, 2006 10:42 PM | トラックバック (0) | Bossa Nova & MPB
面白そうな作品ですね。
「夜の女王のアリア」は、コロラトゥーラ(?)の超人技を披露する曲だと思うので、それを止めてしまうとなると、金切り声でシャウト?とか
りろ@涅槃 : June 8, 2006 08:49 PMシャウトとはちょっと違いますね。なんとも説明し難いのですが、とにかくエキセントリックです。そして、ことごとく原曲と全く関係のないエルメートのピアノが壮絶です。
まっちゃん@シリウス : June 8, 2006 11:41 PM