August 23, 2006
日本の電子音楽
川崎弘二著によるこの本の638ページという分量にまず驚かされますが、内容もページ数に見合った濃厚なものです。巻末に収められた資料集は日本の電子音楽の作品リスト、音源リスト、文献リストの3本立てになっていて、これだけで200ページ弱、「主要」なものと慎ましく書いてありますが、ここにのってないものはないと事実上言ってもよいのではないでしょうか。
あまりの分量にまだまだ読み切れていませんが、第二章では19人に及ぶ関係者へのインタビュー、第三章での詳細な年代ごとの記録(1953〜75年の間に関しては毎年の状況が詳細にまとめられています)という堂々たる構成にはひれ伏すしかありません。
インタビューに登場する人は、湯浅譲二、上浪渡、佐藤茂、一柳彗、高橋悠治、小杉武久、水野修孝、松本俊夫、松平頼暁、篠原眞など錚々たるメンバーです。
柴田南雄、武満徹、黛敏郎、諸井誠あたりの大物が抜けている事を差し置いても、非常に貴重な資料になり得ると思います。
最近、どんどん日本の電子音楽の音源が発売されてきていますが、インタビューや年代記での記述をみるとまだまだ未知の作品が埋もれています。この書籍の出版をきっかけに、もっと音源が発掘される事を願いたいものです。
演奏家が楽譜を演奏して再現する事の出来ない電子音楽が生き残って行くためにはそれしか方法がないのですから。
個人的にはシュトックハウゼンが日本の電子音楽に与えた影響が気になるところですが、50年代の初期の電子音楽の作曲技法へ与えた影響(曲によってはシュトックハウゼンの作曲プロセスを雛形にした模倣的なものもあります)、1966年に来日した際のNHKの電子音楽スタジオでの「テレムジーク」「ソロ」の作曲、1970年の大阪万博での演奏に関しては、もちろんきちんと押さえられています。
知らなかった事としては、シュトックハウゼンのアシスタントもしていたこともある篠原眞が「ミクストゥール」のスコアの浄書をやっていたことが挙げられます。
その部分を引用すると、
「ミクストゥール」を二ヶ月かけて書きました。シュトックハウゼンがさっと速く書いてきた草稿を、A2の大スコアに見やすく美しく書くという事でした。
シュトックハウゼンはおそらく早起きして一、二ページを書きます。毎朝西ドイツ放送局電子音楽スタジオで会ってその草稿を受けとり、できればその日のうちに清書するわけです。とても骨の折れる仕事でした。
(引用終わり)
この辺のプロセスに、いかにもシュトックハウゼンらしいな、というのがにじみ出してきますけど、おそらく膨大なダメ出しを受けながらの大変な作業だったと推測します。
こうした浄書の仕事は今やアントニオがMacを使ってやっている訳ですが、制作手法は変わっても職人魂は同じなんだと思います。

武満が抜けているのはなんとなく分かりますが、黛がなぜ抜けているんでしょうねぇ・・・・・というか、この二人が逝去後の他の人へのインタビューでしょうか。それなら、しょんぼり納得。
確か黛の初期作品で、シュトックハウゼンの習作IIの模倣的な作品があったように思います。
音源発掘ですけど、きちんとした全集を予約生産みたいな形でリリースしてくれる会社はないものでしょうか。
さなやん(りろ@涅槃) : August 24, 2006 08:10 AM黛、諸井の50年代のものはシュトックハウゼンの作曲技法を下敷きにしています。
はじめて聴いた時は、シュトックハウゼンのパクリだな、と思っていましたし実際そういう面もありますけど、改めて聞いてみるとなかなか良く出来た曲だと思いました。