August 11, 2006

Stockhausen→Bach, Markus, Mozart

シュトックハウゼン講習会にかかわる業務をとりしきっていたDettloff Schwerdtfegerは、現在シュトックハウゼンのもとを離れライプツィヒで働いています。現在の肩書きはそこにあるバッハ・アルヒーフのゼネラル・マネージャーです。

Bach-Archiv Leipzig

シュトックハウゼン、バッハというドイツの異なる世代の大作曲家に携わる大きな仕事を渡り歩くという、何ともゴージャスな経歴ですが、見た目は未だにドイツの学生風で彼のいかめしい名前とのギャップは大きいです。
今回はライプツィヒの仕事の合間に数日間、1受講生として参加していましたが、今年、バッハ・コレギウム・ジャパンがドイツに演奏旅行に来たよ、とか鈴木雅明氏がバッハ演奏のコンクールの審査員をしたよ、などという話をしていました。

彼の姿を見るのも久々で懐かしかったのですが、もう一人久々に見た大物が。
NATÜRLICHE DAUERNの演奏会の日だったのですが、見覚えはあるけれどもあれっ?という顔を発見しました。
それは何とマルクス・シュトックハウゼンでした。
かつてはシュトックハウゼン講習会でトランペット・クラスの講師を務め、異様なまでの集中力で圧倒的な演奏を披露してくれていたのですが、自身の演奏活動に専念したい、ということで父親の作品の演奏からここしばらく遠ざかっているのです。
たまたま同じ時期にケルンでライヴがあり、そのついでにキュルテンに立ち寄ったらしいです。
そのケルンでのライヴはそこに聴きに行った友人の話によると、教会でのソロの即興で長い残響を利用し、照明にもこだわった演奏だったようですが、そこでの非拍節的なタイム感は、マルクスがキュルテンでたまたま聞いた父親の新作NATÜRLICHE DAUERNに影響を受けたようだった、ということです。

個人的には、マルクス名義で出している何枚かのアルバムでの「気の抜けたような」音楽性(部分的には面白い瞬間もあるのですが。。)が全く好きでないし、そんなことするより親父の作品演奏している方が「光っていた」と思うのですが、それは本人の意思ですから仕方ないのでしょう。

マルクス・シュトックハウゼンHP

ただし、純粋なトランペット奏者としての技量は非常に素晴らしいことには変わりありません。
エトヴェシュのトランペット協奏曲風の作品「Jet Stream」でソロを吹いているアルバムがありますけれども、彼のソロのお陰で作品の印象自体がものすごくグレード・アップしているように感じられます。
父上の指揮によるハイドンの「トランペット協奏曲」も本当に軽々と吹いています。
(ここでの父上作曲の「微妙な」カデンツァが何とも言えません。カデンツァという言葉から期待する超絶技巧を駆使した音数の多いフレーズなどといった期待をことごとく交わしているため、第一印象は「何じゃこら?」でしたが、実は聞き込む内にだんだんと面白さが滲み出てくる逸品です。)

ハイドンといえば、モーツァルトとシュトックハウゼンの関わりも要チェックです。
以前の記事にも書いたシュトックハウゼンによるモーツァルトのリズム構造に関する論文は非常に面白いです。

調性音楽における和声のカデンツと「リズムのカデンツ」の関わりの分析が膨大な実例と共に紹介されていますが、ドミナント→トニックという周波数比に直すと3:2という構造が、リズム構造にも深く関係している、という内容です。
リズムでの3:2という比率は通常の音符と付点音符の対比、あるいは通常の音符と3連符の対比に相当しますが、そうした関係が作品の様々な次元(楽章間の拍子の関係、楽章内での転調と基本リズムの関係、和声カデンツとリズム・パターンの関係)で表れているというものです。

特にここではリズムの細部構造(=リズムのカデンツ)に焦点を当てて分析をしていますが、これを踏まえていくつかのモーツァルトの作品を聞いて見ると、モーツァルトの音楽の心地よさの秘密の何割かは、このリズム構造にあるのではないか、と思えるようになってきました。

まっちゃん@シリウス : August 11, 2006 07:27 AM | トラックバック (0) | Stockhausen , シュトックハウゼン講習会2006

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