October 30, 2007
KLANG13時間目「宇宙の脈動」
今年度のシュトックハウゼン講習会で最も衝撃を受けた電子音楽の新作「宇宙の脈動」のCDがキュルテンより到着しました。
8チャンネルの電子音楽ですが、低音から高音までの各音域に分かれた24層のメロディーのループ(それぞれテンポが異なり、独自のピッチ・ベンド、テンポ変化を伴う)が低音からどんどん積み重なっていくだけでなく、その24層が各部分で空間移動の仕方も変えるので(全部で241種類の空間移動が行われる)、キュルテンで8チャンネルのプロジェクションで聴いた時には平衡感覚を失うような異様な感覚に陥りました。
ローマで世界初演された時にテクノやヒップ・ホップのファンから猛烈な反響があったこともうなずけるドラッグ的な音響といえるでしょう。
CD化に当たってこの複雑な音響がステレオにミックスされることにより、当然、空間移動の効果は実演の100分の1に押さえられ、8チャンネルですら細部が混濁して聴こえる音響の複雑さが(作曲者もミキシングをやり直したいようです)ステレオに圧縮されることによりさらに細部は聴き取りにくくなり、実演で聴いた時の100分の1の感銘しか受けませんでしたが、それでも集中して聴いていると体が酔うような感覚になりますし、シュトックハウゼンの電子音楽の新たな傑作に加えられ得ることは間違いありません。
この音塊の密度の濃さを喩えるとなると、クセナキスの「エールの伝説」くらいしか比較対象が思いつきませんが、クセナキス作品と決定的に異なるのが全てがメロディーから構成されているということです。
24層のメロディーが同時に演奏される部分(約10分間)では、個々のメロディーを聴き取る事は極めて困難で、表面的にはクセナキス的な音響にも近いのですが、集中して聞くとメロディーの断片の集積であることがなんとか認知できます。
32分の作品本体の後に「付録」として24のそれぞれのレイヤーの冒頭90秒を、独立して聴けるようになっていますが、レイヤー24から1へと聴き進めると、音域がだんだん上昇、テンポもだんだん加速(1音の基本持続が6.4秒から0.03秒へ)していく様子が手に取るように分かります。
24のそれぞれのメロディーの構成音は1〜24音とすべて異なっていますが、例のKLANGの24音セリーから導き出されていることが一聴して分かりますし、ループされたメロディーが前述の通り不規則なピッチ・ベンドやテンポ変化(このカーブも3分ごとにセリエルに交替する)を伴うため決して単調さに陥ることはありません。
キュルテンで包み込まれるような音響条件で聴いた時には暴力的にも聴こえた音の密度が、ステレオで「客観的に」聴いて見ると、最も複雑な箇所ですら極めて美しく響いていることに初めて気付きました。

やっと我が家にも届いたので、聴くことができました。
音の空間移動の凄まじさに驚嘆です。だんだん音の運動が早くなっていくので、凄い切迫感を感じました。
当店でも、このCD5枚ほど受注をいただきまして、注目度の高さが伺えました
ステレオで聴いてもそれなりに面白いのですが、この曲は大音量で8チャンネルで聴くのが最高なのです。
シュトックハウゼンの言うように暗闇で目を閉じて聞くと、頭の中で粒子がうごめきます。。