January 22, 2008
レコ芸、音友のシュトックハウゼン追悼記事
現在発売中の「レコード芸術」「音楽の友」(いずれも2月号)にシュトックハウゼンの追悼記事がのっていますのでお知らせします。
「レコード芸術」には片山杜秀、沼野雄司の両氏による記事がのっています。その内容には部分的に疑問を感じる点があるものの、(某新聞の追悼記事と比べるとはるかに)「まともな」記事だと思いました。
シュトックハウゼンは、きちんと聴いた事もない作品に対しての筋違いな批判など「まともでない」論評をされることが普通なので、ベストではないにしても「まとも」であることはとても重要です。
ちなみに片山氏の「天国の扉の正しい開き方」の文章に私が撮影した写真(当ブログでも掲載したもの)が掲載されています。シュトックハウゼンが天国の扉の向こう側へ去っていくように見える写真です。
沼野氏の記事の中で「祈り」を日本で演奏する提案をしたことが書かれていましたが、実はカティンカから日本の○○が指揮する○○交響楽団で「祈り」を演奏したいと打診してきているが、その指揮者やオーケストラのことを知っているか、という問い合わせが私に来ていたので、おそらくそれが沼野氏の提案の企画だったのだろうと思います。
シュトックハウゼン側はオーケストラに1週間ほどのリハーサル期間を要求し、それでは経費が莫大なものになるので実現しなかった、と書いていますが、それは沼野氏の言う単なる「完璧主義」だけからではなく、本当にそれくらいのリハーサルを積まないとまともな演奏ができないからなのです。
「祈り」のスコアを見れば、弦楽器の配置が通常と左右逆だったり、オーケストレーションが極端に細かかったりとその演奏の困難さは一目瞭然です。
しかも各小節ごとにテンポが細かく変化する(1小節内で複数のテンポを持つ所もある)ので、指揮者にとってもその負担は極めて大きなものとなります。シュトックハウゼン自身が指揮をする時も数カ月前から「指揮の練習」をしていたことが伝えられていますし、あのエトヴェシュが初めてこの作品を演奏した時も、彼がそれまで指揮した中でもっとも指揮の難しい作品と述べたほどのものですから、その大変さは想像がつくと思います。
沼野氏も触れている通り、この作品は第一勧銀で委嘱されたのにも関わらず日本初演がいまだなされていません。もともと小澤征爾氏が指揮の予定だったのが、彼が作品のコンセプトに賛同できずキャンセルしたのですが、この作品はマイムを含む実演で見ないと真価は全く分からないので、いつの日か日本で演奏されることを期待します。
「音楽の友」の方の記事は日本におけるシュトックハウゼン研究の第一人者、清水穣氏のもので、某新聞記事に対する辛辣な批判から始まる痛烈な文章です。最後に、シュトックハウゼンにとっては「自分の音楽だけが絶対的に重要である」という記述がありますが、さらに補足すれば、「自分自身」よりも自分の「音楽」が重要であるといえます。
「自分はいつか死ぬけれども、自分の作品は後世に残っていく」という彼の発言を私は直接聞いた事がありますが、自分の作品を正しく伝えていくために、楽譜にしばしば楽譜本体よりも長大な解説を付し、楽譜もCDもすべて自分の監修の下制作し、キュルテンの講習会でアナリーゼや演奏法の指導を行っているのです。
その努力が今後どうなるかは分かりませんが、彼の勤勉な性格のお陰で、今年初演予定の委嘱新作はすべて完成していることには改めて恐れ入ります。もっとも遅い初演予定は10月です。
初演予定はないけれども、完成している作品はざっと10作品くらいあります。

来年1月17日、BBC響のComposer Weekendでシュトックハウゼンをフィーチャーするらしいのですが、何が取り上げられるのか興味津々です.
M. F. : January 23, 2008 12:20 AM「祈り」のスコアの様子をよんでみると一週間の練習では足りませんね。ドイツだと2週間かけるかもしれませんね。それでもだめなら3週間かけるかも?日本の移植は幼稚ですね。一旦委嘱したらパート譜から演奏まで責任を持ってやるのが本来の姿ですね。
「自分自身」よりも自分の「音楽」が重要であるといえます。
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これを悪く解釈すると「エゴイスト」と思われてしまうのですね。でも上手い言い方だとお思い増す。彼はそういう意味で生真面目な性格ですね。
しかし事実篠原真さんやラッヘンマンはそう認めていますね。去年の11月WDRのコンサートを聞くのにラッヘンマンの前で並んでいたらシュトックハウゼンへの悪口ばっかりしゃべっていましたね。でもいつも彼はこういう感じですね。あのTexteの9巻と10巻が出たときに彼に見せたらニヤニヤ笑ってばかりいましたね。でも彼はシュトックハウゼンの反対者ではなく試験にも出すしレッスンでアナリーゼも良くやりましたね。シュトックハウゼン賛同者といえども丸褒めから笑い飛ばす人までいろんなタイプの人がいることは確かです。
M.F.さん>
イギリスはシュトックハウゼンに対して比較的好意的ですから、良い企画になるといいですね。
今年9月に初演予定の「ティアクライス」オケ版かもしれませんね。
Kan-noさん>
ラッヘンマンの「マッチ売りの少女」の日本初演をやった時は(私も出演しました)、オーケストラの稽古に2〜3週間はかけました。私が担当したヴォーカル・アンサンブルはもっと時間をかけた記憶があります。公演を主催した東京交響楽団の英断ですが、このくらいの手間をかけた企画をもっと日本でやってもらえたら、と思います。
「祈り」に限らず、シュトックハウゼンのオーケストラ作品の楽譜には必ず、どのような稽古を何日間かければ良いか、ということが記載されていますね。
いかに短い時間で仕上げるか、ではなく、いかに長期間しっかりと練習を積み上げて完成度を上げるか、ということが問われる風潮になってくると良いなと思います。
まっちゃん@シリウス : January 23, 2008 08:52 AM「祈り」のスコアをどこかでちょこっと見たことがありますが、いつもの彼らしく複雑ですね。ドイツの放送響はたぶん3週間はかけるでしょう。最初の2週間は文奏で終わるでしょう。何しろ70分かかりますから日本で経験のない演奏家が一週間では無茶でしょう。プローべ回数は普通は記しませんね。初演が一番きついのですが徐々に慣れてくると短時間で演奏可能になるからでしょう。最近だと「モーゼとアロン」が100回から40回にと実証していますね。昔シュトックハウゼンの「指揮」ノ講習会に出たときアンサンブル・もでるンは一週間時間があったのですが、GPでも間違えていてできてなかったですね。現代音楽の専門家がこうですから日本のごく「普通」のオケは一週間は少なすぎます。
Shigeru Kan-no : February 23, 2008 04:59 AM