April 16, 2008
MILES FROM INDIA
マイルス・デイヴィス同窓生とインドのミュージシャンの混成バンドによるマイルス曲集です。プロデュースは「オン・ザ・コーナー」のボックス・セットの制作も手がけたボブ・ベルデンです。ここで取り上げられている曲目をみると、So WhatやAll Bluesのような「クラシック」な名曲だけでなく、Spanish Key、Ife(2ヴァージョン収録)、Great Expectationsのような最もマイルスが先鋭的だった70年代の渋めの曲もかなり含まれていて、その選曲に呼応するかのようにピート・コージー、マイケル・ヘンダーソン、デイヴ・リーブマン、バダル・ロイなど、その筋の人がみれば思わず唸ってしまうであろうこれまた渋いメンバーが集められています(もちろんロン・カーター、チック・コリア、マーカス・ミラーなどのメジャー所も押さえています)。
こんな渋い選曲と人選だからきっと凄いアルバムに違いない、という期待と、単なるお祭り企画の色物の駄盤ではないかという不安が交錯する中聴き始めてみると、なかなか良い仕上がりで安心しました。
アルバム1曲目はSpanish Keyというタイトルなのになぜかインド音楽とジャズがミックスされていますが、両者が違和感なく結びつけられたこのアレンジを聴いて、アルハンブラ宮殿経由でスペインの旋法とインドのラーガがリンクしているという事に気付かされました。そもそもマイルスが追求したモード技法はスペインの旋法と同様、インドの音楽理論にも繋がりやすい所があり、70年代にはシタールやタブラを取り入れたアレンジも試みていることもあり、マイルスとインドの親和性は実は高いのです。
とはいえ、「マイルスとインドのフュージョン」というコンセプトが空回りして、インド楽器による演奏があざとく感じられる部分もあり、マイルス同窓生バンドにありがちな、テクニックも音楽性も申し分ないけれども空虚な演奏結果に終わってしまう場面も少なくありません。
ひょっとするとボブ・メルデンのプロデュースが音楽を整理しすぎて、スリルが足りなくなっているのかもしれません。
逆に、マイルスがいればもっとよくなるはずだ、という過度な期待を私が抱いているだけなのかもしれません。
もっとも、実際にマイルスが加われば、もっと音を厳選して音楽全体にスペースを持たせるのではないかと思います。
このアルバムの中でもっとも健闘しているのがウォレス・ルーニーでしょう。この究極のマイルス・ヲタクが演奏する場面では、マイルスがあたかもそこに立っているかのようにサウンド全体に緊張感が張りつめ、彼のトランペットのサウンドには本当にマイルスの霊が乗り移っているのではないかと信じたくなるくらいに、マイルスへの愛が満ち溢れています。
あと、発見だったのがマイケル・ヘンダーソンのベースのサウンドの面白さです。70年代の録音ではあまり分からなかった彼のサウンドの立体感がバンド全体のグルーヴに絶妙な推進力を与えています。
それにしても、Ifeのスロー・ヴァージョンの音絵巻は涅槃の境地そのものです。
まっちゃん@シリウス : April 16, 2008 09:06 PM | Miles Davis
早速購入してきました。
最初聴いたときには、ちょっと無理があるように思えましたが、だんだん耳になじんできました。
まぁなにより、超保守的なジャズマニアにケンカ売るような企画が好きですね(笑)
そういえば、ギターは標準チューニングである限り、イベリア半島の音型と結びついているので、ロックなどの中にも潜在的にスペインが入っているとかいう話を聞いたことがあります。
バルカンもそうですが、半島の音楽はすごく新鮮に聞こえます。
さなやん(りろ@涅槃) : April 17, 2008 01:21 PM>超保守的なジャズマニアにケンカ売るような企画が好きですね
それでは、セニョール・ココナッツによるマイルス・カバー・アルバムというのはどうでしょう?
まっちゃん@シリウス : April 17, 2008 07:07 PM