July 23, 2008
シュトックハウゼン「渡り鳥」こっそりとCD化
シュトックハウゼンの直観音楽の第2作となる「来るべき時のために」の中の「渡り鳥」がこっそりとCD化されているのを発見しました。
LP音源のみで、長らく入手困難だったものです。
通常のStockhausen VerlagのCD全集ではなく、彼のレクチャーやインタビューの音源を収めたText-CDシリーズの付録のような形で収録されています。このシリーズの第22集「 ...Ich werde die Töne 1971」というCDに収められています。
データは以下の通りです。
ZUGVOGEL
演奏時間26分
録音:1975年
Markus Stockhausen(電子トランペット、フリューゲルホルン)
Harald Bojé(エレクトロニウム)
Aloys Kontarsky(ピアノ)
John Miller(トランペット)
Karlheinz Stockhausen(半音階リン、スライド・ホイッスル、インディアン・ベル、バード・ホイッスル、声)
マルクス・シュトックハウゼンの若い時代の演奏が聞けるということが貴重でしょう。
通常のCDと同様、シュトックハウゼン出版から直接入手可能です。
このほかに27分と22分のインタビューが入っていますがドイツ語で話されていますのでご注意を。
ちなみに同じText-CDシリーズの第21集には大阪万博のドイツ館での「短波」(第2部のみ)の演奏音源(エトヴェシュによるプライヴェート録音)が収められていますが、こちらは未入手。
July 22, 2008
June 22, 2008
KLANG10時間目GLANZ・世界初演ライヴ録音
今月の19日にオランダで初演されたシュトックハウゼンの遺作「KLANG10時間目:GLANZ 輝き」のライヴ録音(演奏はASKOアンサンブル)をオランダ放送のホームページより聴く事ができます。
以下のリンクの下の方にこの日演奏された作品の音源へのリンクがあり、その中にこのGLANZへのリンクもあります。接続に少し時間がかかりますが、のんびり待っていれば再生が始まります。
http://hollandfestival.radio4.nl/page/radiotv/4557
この40分弱の作品はファゴット、ヴィオラ、クラリネット、トランペット、トロンボーン、オーボエ、テューバという風変わりな7重奏のための作品ですが、金管楽器は限られた場所しか登場しません。
5時間目の「ハーモニー」では木管楽器による幅広い音域を使った演奏至難なアルペッジョが頻出していましたが、この作品の木管楽器やヴィオラのパートにもそうした音形がでてきます。
この長大な作品の感想を書くのは簡単ではありませんが、「光の日曜日」やこれまで聴いてきたKLANG諸作品で顕著だった、楽器本来の音色そのものの美しさを重視する方向性の延長線上にあります。特殊奏法はほとんど出て来ませんし、テクスチュアも簡素なのですが、それでもありきたりの音楽に陥る事なく、これまで聴いた事のない神秘的な美しさに満ち溢れた作品に仕上がっていました。
この作品は今年度のシュトックハウゼン講習会でも演奏される予定ですので、実演を聴くのが楽しみです。
June 07, 2008
GEDENKSCHRIFT für STOCKHAUSEN
「GEDENKSCHRIFT für STOCKHAUSEN」というタイトルの本がシュトックハウゼン音楽財団より出版されました。
http://www.stockhausen.org/gedenkschrift_preface.pdf
あえて訳せば「シュトックハウゼンへの感謝文」とでもなるのでしょうか、数年前から本人には秘密で進行していた、シュトックハウゼンの生誕80年を祝うための様々な関係者の文章をまとめたプロジェクトです。
運悪く、シュトックハウゼンはこの本の存在を知る事なく79歳で逝去しましたが、カティンカとスージーは敢えて内容を変えずに追悼として出版したという訳です。
50人強の著者による原稿がまとめられていますが(著者は上記リンク先の目次をご覧下さい)、なぜか日本人でただ一人私の文章ものっています。原稿を読み返してみると、完成したのは2007年の元旦、慌ただしい中書いた文章ですので、拙い英語が恥ずかしいですが、我ながら結構な力作ではあります。
私のシュトックハウゼンの音楽との出会いから2005年の来日公演についてまでを、ちょっとした物語風にまとめた内容です。
2ページ程の文章とは言え、外国の出版社から自分の文章が出版されるのは不思議な気分です。
献本してもらえる、という話だったので、近々現物が届くと思われます。楽しみです。
May 18, 2008
フォルメル技法講義内容の補足(再アップ)
本日のシュトックハウゼンのフォルメル技法のレクチャーにお越し頂いた方、ご来場ありがとうございました。
時間が短くなりすぎたらどうしようと思っていたのに、大幅に予定時間をオーバーするいつもの展開、要領が悪くて申し訳ございませんでした(>主催者のお二方)
肝心の「ヘリコプター」のアナリーゼ、猛スピードでの慌ただしい説明になりましたので、ご来場者向けに補足をしておきます。本日ご来場でなかった方には意味不明かもしれませんがご容赦下さい。
分かりづらかったのではと思うのが、ズーパーフォルメルを実際の楽曲の構造に反映させる部分かと思います。
(ズーパーフォルメルはシュトックハウゼンの公式サイトに画像がでています)→ここをクリック
「ヘリ」の部分にあたるフォルメルは7小節目の1拍目の部分になります。
60拍(=1分)から構成されるズーパーフォルメルの四分音符一拍分がLICHT全体の16分の構造に対応するので、960倍(=16x60)に引き延ばされる事になります。つまりフォルメルの四分音符一個は同じテンポの四分音符960個分に対応するという事です。
「ヘリ」の部分のテンポは50.5なので、この4分音符一拍分は「ヘリ」の構造に対応させると基本テンポを50.5のテンポに「移高」した形で四分音符960個分ということになります。
この部分のエーファのフォルメルは16分音符、8分音符、16分音符に分けられますから、これを単純に割り算して、テンポ50.5に「移高」した状態で四分音符240、480、240個分に分けられます。
はじめの16分音符に対応する240個の四分音符を60拍のズーパーフォルメルで埋めるためには、すべての音価を4倍にすれば丁度良い事になります(60x4=240)。そしてこの音符はDなのでエーファ・フォルメルの開始音をDに変更、つまり原形より長2度上げ、他のフォルメルも同様に移調することによって、この部分の音楽がすべて確定します。本来最低声部のルツィファー・フォルメルが最高部にくるなど音域の置換はありますが、音価4倍(ただし基本テンポは50.5に移高)、長2度上に移調されたズーパーフォルメルがそのまま演奏されるだけです。
8分音符の部分は音価を8倍(60x8=480)でエーファ・フォルメルがFから始まるように完全4度上に移高、次の16分音符の部分は音価を4倍にしてエーファ・フォルメルがGesから始まるように減5度上に移高することになります。
ミヒャエル・フォルメルのAsののばしはお手すきの楽器によって頻繁に繰り返し、ルツィファー・フォルメルの半音階上行の位置は4分音符単位でカウント(細かいテンポの変化は無視しています)し、適切な位置でチェロによって演奏され(繰り返し)ます。
つまりこの作品の主要部では様々な置換処理が行われながらもズーパーフォルメルが3度くり返して演奏されるだけの構造になっている、ということです。
とはいえ、メロディーの各音を各楽器でグリッサンドを駆使してかなり遅めなテンポで演奏されるため、ボーッと聴いているとこの構造は耳に入っていませんが、各フォルメルの音域を確認した上で、ズーパーフォルメルの楽譜をにらみ付けながらCDを聴けばそのまま追っていけるはずです。慣れれば耳で聴くだけでも聞き分けられるようになります。
実際にレクチャーしてみたら90分×4回くらいかけても良い内容だったかもしれません。
本日お越し下さった方で、講義内容に関して質問がある方がいらっしゃれば、このエントリーのコメント欄で受け付けます。
本企画と連動した「双子座三重奏団&エクスドット」ツインライヴのご予約も受け付けておりますので、こちらも是非ともお越し下さい。
May 17, 2008
アンサンブル・モデルン シュトックハウゼン・プロ
備忘録程度に簡単な感想だけ。
「ソロ」
予想通りリアルタイムの複雑なディレイ処理ではなく、あらかじめディレイ音を録音、処理した音源をヘッドホンからのクリックトラックで同期して演奏していました。ミキシング・コンソールに行って確認したら、この音源のCD-Rが置いてありました。
そのためか生演奏と(偽)ディレイの音色感に大きな差がありました。
「クロイツシュピール」
トムトムのスフォルツァンドがうるさすぎ&音が汚く、全体の音量バランスを見事に壊していました。
全体に打楽器パートの音色感覚に緻密さが不足。
シュトックハウゼンがいたら速攻でダメ出しするのが目に浮かびました。
「小ハルレキン」
プログラムに「日本初演」と書いてあったのは夢だったのでしょうか。。
メイクが不気味で、前曲から連続演奏で負担の大きい割にはそれなりに健闘していました。
ただ、動きがこんなんだっけ?と感じた箇所が多々あったのと、シュトックハウゼン講習会のクラリネット・クラスの「入門曲」であるこの曲のキュルテンでの演奏と比べると、冒頭の至難なアルペッジョひとつとってもキュルテンでやってる人は相当ハイ・レベルな演奏をしていたのだ、と再確認しました。
「マントラ」
華麗に弾き飛ばしてました。
異様にテンポが速かったのですが(演奏時間60分)、それに呼応して細かいフレーズがすべてうやむや。
かなり分かりやすいミスタッチも数え切れないくらいありました。
そして全体に力任せに弾きすぎて音色も乱暴な感じがしました。
リング変調はすこし深すぎるかなと思った箇所もありましたが、生楽器とのミックス具合は悪くなかったと思います。
しかし、途中、短波ラジオの録音が加わる所で、ピアニストが使っていたフェーダーが故障してフェイドアウトできなくなってしつこく合図していたのに(「お能」のエピソードの所辺りまで音がなっていました)、舞台後方のサウンド・プロジェクショニストは放置。スコア見ずにミキサー操作していたのでしょうか。
特に前半、照明のノイズが気になりました。
散々不満を書き散らしましたが、日本でこのようなプログラムによる演奏会自体が少ない事を考えると、とにかく演奏してくれただけで御の字なのでしょうか。
あるいは、急遽決まった企画に関わらず、演奏の緻密さはともかく、短期間で本番が成り立つ程度に素早く準備できるのは悪く言えばやっつけ仕事ですが、よく言えばそれだけの能力があるということでしょう。
May 14, 2008
「シュトックハウゼンのフォルメル技法」講義予定内容
1.フォルメル技法に至るまでのシュトックハウゼンの作曲技法の大まかな変遷
2.フォルメル技法の概要と実例の紹介
例:「マントラ」「祈り」「友情に」
3.TIERKREISのいくつかのメロディーの分析
4.LICHTの概要
5.LICHTのSuperformelの分析
6.「ヘリコプター弦楽四重奏曲」の分析
2008年5月18日(日)18:00開始~20:30終了予定
STUDIO 1619 (グリーンSTUDIO)(新桜台駅下車徒歩1分)
¥500 (先着20名 予約優先入場制)
主催者サイト:エクスドット
非常に狭い会場で、すでに予約もそれなりに入っているようですので、ご興味の有る方はおはやめにご予約下さい。
アナリーゼ自体はもう終わっていますが、現在配布資料作成中です。それなりに充実したものにすべく奮闘中。
May 09, 2008
[緊急告知]シュトックハウゼン・レクチャー
■シュトックハウゼンのフォルメル技法と《LICHTの概要》
~《ティアクライス》と《ヘリコプター弦楽四重奏曲》を例として
2008年5月18日(日)18:00開始~20:30終了予定
STUDIO 1619 (グリーンSTUDIO)(新桜台駅下車徒歩1分)
¥500 (先着20名 予約優先入場制)
講師:松平敬
主催者サイト:エクスドット(←写真が笑えます)
ご予約は上記サイトをご覧下さい。
来週のアンサンブル・モデルンのシュトックハウゼン・プロとたまたま日が近いですが、またシュトックハウゼンのレクチャーをやります。
今回のお題は「フォルメル技法」です。
シュトックハウゼンの70年代以降の主たる作曲技法として「フォルメル技法」という名称自体は徐々に知られつつありますが、実際にフォルメルがどのように作曲され、実際の作品へどのように投射されているのか、ということはほとんど知られていないのではないかと思い、今回のお題として選びました。
「マントラ」「祈り」「ティアクライス」での作曲法を概観し、「光」のズーパーフォルメルの分析、そしてそこから「ヘリコプター弦楽四重奏曲」がどのように作曲されたかを解析する事をこのレクチャーの目標としたいと思います。
それでは、なぜ「ヘリコプター弦楽四重奏曲」なのか。
1. ほとんど実際の音楽が一般に聴かれていない近作の中で、この作品がよく聴かれている特異な状況の割には、ヘリコプターを使った衝撃的なコンセプト以上の、具体的な音楽の内容についてほとんど理解、聴取されていない
2. 「光」でのズーパーフォルメルによる作曲の分析としては「初心者」むけの非常に分かりやすい構造を持っている
3. その構造が(少し努力すれば)耳で知覚可能である。
この3点から、シュトックハウゼンの近作のより深い理解の糸口になり得る作品だと判断した次第です。
このレクチャーは以下のコンサートのプレ企画となっていますので、宜しければこちらにもお越し下さい。
■「双子座三重奏団&エクスドット」ツインライヴ
2008年6月2日(月)19:00開演 18:30開場
杉並公会堂・小ホール
¥3000(予約・前売り¥2500)
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シュトックハウゼン:ティアクライス(1975 /抜粋)
曽我部清典:新作 (2008 /初演)
中川俊郎:3人の噪音発生者のための音楽 (1987 / 2008年版初演)
中川俊郎:新作 (2008 /初演)
松平敬:STONE (2008 /初演)
川島素晴:インヴェンションV b (2008 /初演)
川島素晴:Das LachenmannⅡ (2008 /初演)
山根明季子:Transcend-b (2008 /初演)
ケージ:Five (1988)
<出演> 双子座三重奏団(曽我部清典、中川俊郎、松平敬)&エクスドット(川島素晴、山根明季子)
主催者サイト:エクスドット
ご予約は上記サイトをご覧下さい。
(写真は第2回目のライヴでカーゲルの「3手」ピアノのための「ヒポクラテスの誓い」を演奏した時のリハの様子です)
ちなみに、週明けの5月12日夕刻には、東京音大にてソプラノ歌手の太田真紀さんと現代声楽曲についての特別講義を行います(学外者が入場可能かどうかは不明)。
「レコード芸術」誌の輸入盤紹介の記事を執筆する仕事も始めたりと(発売中の5月号にはラッヘンマンのアルバムについて書きました)、だんだん自分の職業が分からなくなりつつあります(笑)。
ただ、一貫しているのは、新しい音楽を少しでも多くの人に触れてもらうために様々なアプローチをしていきたい、ということです。
April 21, 2008
アンサンブル・モデルン シュトックハウゼン・プロ
来月来日するアンサンブル・モデルンが全曲シュトックハウゼンによるコンサートを東京で開催しますので、紹介しておきます。
プログラム:
SOLO(フルート版)
KREUZSPIEL
KLEINE HARLEKIN
MANTRA
日時:2008/5/16(金)東京ウィメンズプラザ
チケット申込みは以下のリンクよりどうぞ。
http://tinyurl.com/4cwgwx
なかなか日本では聴けない「マントラ」も興味深いですが、複雑なディレイ処理を必要とする「ソロ」が超レアです。しかもシュトックハウゼン出版から発売されているこの曲の演奏はこのアンサンブルのメンバーDietmar Wiesnerによるものですから、期待も高まります。
この作品のディレイ処理はあまりに複雑なため、彼がライヴでやるときにはエフェクトをすべて事前録音した「疑似ディレイ」による演奏だったようですが、元メンバーのトランペット奏者William Formanがリアルタイムでこのエフェクトを実現できるシステム(Max/MSPを使用)を2002年のシュトックハウゼン講習会で披露しているので(私もこの実演を聴きました)、この成果が織り込まれた演奏なのかどうかも興味があります。
ちなみにその時の機材を写真に収めたものを発掘しましたので上に貼り付けておきます(クリックで拡大)。
実演に先立ってレッスン室でワークショップが行われたのですが、その時の写真です。
April 18, 2008
シュトックハウゼン講義ヴィデオ
シュトックハウゼンのほとんど全ての作品の音源が自主レーベルのシュトックハウゼン出版から発売されているのはよく知られていると思いますが、さまざまなヴィデオ作品も同じ出版社から発売されています。
カタログはこちらをご覧ください。
http://www.stockhausen.org/video_kassetten_engl.pdf
このカタログの中には最近日本国内でも何度か上演された「モメンテ」の映像もありますし、「光」の各作品のドキュメンタリーや初演映像など興味深いものが沢山あります。
最近入手したもので1972年にロンドンで行われた講義(英語・138分)を収めたものが興味深かったので、紹介しておきます。
「Musical Forming」と題されたこの講義では、彼のデビュー作といえる「クロイツシュピール」から当時の最新作であった「マントラ」に至るまでの様々な作品の音源を聴きながら、彼の多様な作曲技法について説明しています。
点、群、集合による作曲、不確定性の導入や、モメント形式、フォルメル技法に至るまで丁寧に説明しているので、彼の作曲技法の全体像をつかみたい人には貴重な資料になるに違いありません。
私は2000年以来、キュルテンでの講習会で彼の講義を浴びるほど聞いていたこともあり、彼亡き今、その講義の映像を見る行為にはある種のノスタルジーがない訳ではないのですが、彼の口から出てくる音楽に対する考え方は、たとえ知っている事であっても非常に刺激的に聞こえます。
メシアンの「音価と強度のモード」に影響を受けて自身の「点の音楽」へと発展させていった話、ヴェーベルンの短い演奏時間に凝縮された音楽と自身のモメント形式との関連性を述べるところなどは、「歴史的瞬間」に立ち合っているような錯覚すら起こします。
この他にも同時期の種々のレクチャーが発売されているので、見てみようと思います。
完全な「製品」として作られた一連のCDとは違い、ヴィデオの方は「記録用」の趣が強く、DVD-RやVHSによる自家製コピーなので、一般の店頭には売っていませんが、シュトックハウゼン出版へCDや楽譜と同様に直接注文する事が出来ます。
直接通販するのが不安な方は日本で販売の仲介をしてくれるSternklang-Diskというショップがありますので、そちらのサイトもご覧になって下さい。
Sternklang-Disk
私も利用した事がありますが、丁寧な対応で安心して取引ができる優良店です。
ただ価格を安く抑えるために「共同購入」という形を取り若干日数がかかる場合があるので、その点だけお気を付け下さい。
March 30, 2008
セリー・フォルメル・メディア
「インターコミュニケーション」64号(画像をクリックするとamazonに飛びます)に「セリー・フォルメル・メディア〜シュトックハウゼンの《ヘリコプター弦楽四重奏曲》」というタイトルの清水穣氏の記事が掲載されていますので紹介します。譜例や注釈も含めて6ページの分量になります。
清水氏は、冒頭「ヘリカル」(私は勝手にこう略しています)が「スペクタクル的な上演形態で知られている」と書き出したものの、そのすぐ後の部分で2007年の上演を例に挙げ、「スペクタクルと言っても田舎町の文化予算の一部で実現可能な程度に過ぎない」といきなり変化球を投げかけ、初演者であるアルディッティ弦楽四重奏団と作曲者とのやりとりの内容を吟味した上で、最終的には、この作品の「本質はスペクタクルにあるのではない」と結論づけるなかなか凝った構成になっています。それではどこに本質があるのかは実際の記事をお読み下さい。
私自身アナリーゼも試みたこの作品のコンセプトの「肝」を知っている私にとっては、あまりにも当然すぎる結論で頷くしかないのですが、ヘリコプターを4台使うとお金が莫大にかかるなどの「スペクタクル」な面ばかりが述べられている現状を考えると、目から鱗の読者も多いかもしれません。あの「アイ〜ンス」「ツヴァ〜〜イ」という叫び声の由来についてもご丁寧な注が付いています。
シュトックハウゼンの作曲技法を語る上で外せない、セリーやフォルメルについても詳細な解説がありますが(《光》のSuperformel全体を収めた譜例もあります)、フォルメルはおろかトータル・セリアリスムの意義も未だに表層的にしか理解されていない現在の状況を考えると非常に有益なものと言えるでしょう。
トータル・セリアリスムとは、12音技法におけるピッチの操作を音高や強度にも応用したもの、という以上の意義を見いだせない人はこの文章を読むべきだと思います。
もっともこの短い文章を読んだからといってトータル・セリアリスムの詳細や、Superformelが具体的にどのように作曲に使われているのか、などが理解できるようになるものではないのですが、単なる作曲法や表面的なアナリーゼに留まらない深い理解へ達するには、ここに書かれているような内容が最低限理解できていなくてはならないのです。
この様な話をキュルテンの講習会の空き時間など折りに触れて清水氏から直接伺ったことを思い出します。
February 08, 2008
シュトックハウゼン最新作品表
シュトックハウゼンの公式HPに最新の作品表がアップされていますので紹介します。
以下のURLからPDFで見ることが出来ます。
http://www.stockhausen.org/stockhausen_2008_eng.pdf
2008年版の作品表なので、晩年まで作曲し続けたKLANGの最新作まできちんとのっていますし、最新作の記述に見られたいくつかの細かいミス・プリントが訂正されています(と思いながら改めてチェックすると別のミスを発見しました)。
亡くなる前の晩に完成させた「ティアクライス」オーケストラ版ですが、この形としては作品表にはのっていません。2004年にこの「ティアクライス」の5つのメロディーをオーケストラ用に編曲し「5つの星座 FÜNF STERNZEICHEN」として発表していますが、亡くなる直前に編曲したその続きの5つのメロディーは「続・5つの星座 FÜNF WEITERE STERNZEICHEN」として作品表にのっていて、この2つの作品をまとめて演奏する時に「ティアクライス」オーケストラ版として演奏するのだと思います。
ただし気になるのが、「蟹座」と「獅子座」のオーケストラ版が欠落していることです。
最後に完成させたのが双子座なので、生きていればそのままこの2つのメロディーのオーケストラ版を作ったと思うのですが、今年の「ティアクライス」オーケストラ版の初演では、そのまま完成した部分だけ演奏するのか、スケッチなどに基づいて補筆完成させたもので演奏するのかは興味があります。
もう一つ興味を引くのが「牡牛座」のファゴット・ソロ版というのが、作品表のそのすぐ下に追加されていることです。作曲は2007年ですからオーケストラ版の「ティアクライス」を作曲する過程で副次的に作曲されたのだと思いますが、「ティアクライス」の特定のメロディーだけが器楽独奏用にアレンジされた例は他にないのでどのようなリアリゼーションを施したのか極めて興味深く思います。
今までは、毎年、作品数が少しずつ増えていく作品表を見るのが楽しみだったのですが、これから先はもう新しい作品が増えることはありません。悲しいです。
音楽現代・シュトックハウゼン追悼記事
今発売中の音楽現代2月号にシュトックハウゼンの追悼記事がのっているので紹介しておきます。
三橋圭介、宇野文夫両氏による記事です。
三橋氏の記事はシュトックハウゼンが書いた「世界音楽」と題されたテキストの紹介が大部分ですが、30分以上の大曲である「ピアノ曲XIII」を「小品」と表現したり、CDなどで全曲を聴くことができ、スコアもすべて出版済の「光」に関して「作品の全貌はまだ不明のままだ」と記述するなど疑問の残る部分も若干ありました。
宇野氏の記事は3ページにわたる大きな記事ですが、この内容には大きな疑問符を付けざるを得ません。
誰が読んでも疑問点続出の浅田彰氏の追悼記事に比べて、この記事は多少詳しいそぶりをしているので注意が必要です。
まず、作曲年の違いという単純ミスが目立ちます(公式サイトから容易に詳細な作品表を閲覧できるにも関わらず)。
「光」「リヒト=ビルダー」「自然の持続」(タイトルはすべて著者の日本語訳)の3作品の作曲年が1年ずれていて基本的な取材が出来ていないことを伺わせます(三橋氏の記事も含めて情報源がWikipediaだったりするのかな、とも思ってしまいます)。
タイトルの間違いはもっと致命的です。「KATHINKAs GESANG カティンカの歌」を「カチンカの夢」と誤記したのには失笑しました。同じ「土曜日」の第1場面が「ルシファーの夢」なのでこれと混ざったのだと思いますが、こうした雑誌を資料として利用する人がいるかもいないことを考えると重要な問題だと思います。
前述のKLANG3時間目の「NATÜRLICHE DAUERN」を「自然の持続」と訳すのも作品のコンセプトを全く理解していない、おそらくCDに添付されているブックレットを読んでいない、としか思わざるを得ません。ピアノの持続音の減衰やピアニストの呼吸の長さでユニットの持続時間を決めていくコンセプトですからDAUERNは「持続」ではなく「持続時間」と訳さないと意味不明になってしまいます。
モメント形式を何の注釈もなく「瞬間形式」と訳して紹介するのも問題です。シュトックハウゼンのこの用語「Moment(独)」は、文字通り「今」という瞬間の意味で使う場合もあれば、「モメンテ」の中でも見られるような20分あまりの部分を指すこともあるからです。
あと、細かく突っ込むとキリがないほどの小さな問題点が散在していますが、それには目をつむるとしても、フォルメル技法の説明、それに続く「オペラ『光』の考察」という部分には事実と異なる記述が多く見受けられます。
宇野氏はフォルメル技法(宇野氏は「旋律作法」と訳しています)のはじまりについて、「71年の『シュテルンクラング』より、シュトックハウゼンは明瞭な旋律線を前面に打ち出すようになる」と書いていますが、まず『シュテルンクラング』ではフォルメルは全く使っていません。作風としては母音変化で倍音を変化させる「シュティムング」(1968)を発展させたものですから、耳で聞いてもそのことははっきり分かるはずなのですが。。。
フォルメル技法を確立したのは、実際は「マントラ」(1970)です。
そしてその技法の説明が「多くは20個ほどの原形旋律が、独自の方法によって組織立って変奏されるものだ」となっていますが、1曲に20個のフォルメルを使った作品は存在しません。基本的には1曲につき1つのフォルメルが使用され、もっとも複雑な「光」でさえ3人の主人公に対応する3声のフォルメル(つまりフォルメルが3つ)を使っているにすぎません。
そして「特徴的なのは、時にダイアトニクにも近い音階が使われ」と続きますが、これも完全に誤りです。
長3度や完全音程など、調性音楽で特徴的な、そしてそれゆえ多くの無調音楽で忌避されてきた音程が何の躊躇もなく使用されている(但しそれらの音程を強調している訳ではない)のは事実ですが、それを即ダイアトニックに結びつけるのは楽譜をきちんと読まず印象だけで記述している証拠です。
「ティアクライス」のような一見平易なメロディーでも、いかなる旋法にも属さない12音列を基礎として構成されていますし、その旋律が調性音楽、ダイアトニックを思わせるような印象を仮に持ったとしても、それを重層的に重ね合わせる方法、和声との関連付けの方法は全く調性と関わりがありません。
そして「この精緻な作法は、セリエルの場合と同様、聴かれる側に効果的に感受されるものでなく、作曲者自身の必要と興味である面が大きい」とありますが、メロディーという知覚しやすい要素を使うことによって、それがどのように変容されるかがある側面においては極めて明瞭に聴き取れます。ついでに言うと50年代のセリーの意義に対する理解にも疑問を感じます。
「光」の考察の章でいきなり驚かされたのが「『光』に関しては、私はオペラ上演を観た事はなく、録音も未聴な部分があるので、ここではその限りの判断である」と断っていることです。某氏のように知らないことをあたかも知っているように書くのと比べれば「誠実」と言えるかもしれませんが、公に出版される雑誌の記事で全曲聴いていないものを「考察」するというのはどうかと思いますし、そこを大目に見ても、では演奏時間約29時間の「光」の中のどの曲を聴いた上での考察なのか、ということは明記しなくては「誠実」ではないと思います。
批判点として「和音や中心音の持続が単に長い」ということを挙げていますが、なぜそれがダメなのかの理由は記されていません。しかも、そうした部分が作品の全体にわたっている訳でもありませんし、「カレ」や「ヒュムネン」など50〜60年代の作品にもそうした要素は沢山見つけられますが、そうした例とどこが異なるのか、という考察が全くありません。さらに「和音変化にも、和声ヒエラルキーが生じない」って、調性音楽ではないのだから当然だと思いますが。。
そして「音楽が平面的に聴こえて、単調に感じられるのだが」という記述には、どういう耳で聞いているのか私には謎が深まります。私は逆に、立体的で変化に富んだ音楽だと思うからです。
それは人それぞれの感性ですから措くとしても、その理由が「大抵の音が電気増幅されスピーカーから発せられることにより、弱音も、特に微細な特殊奏法までも、大きくミキシングされ説明的に聴かされてしまい、その為、聴き手の『耳の積極性』が奪われる」というのが大きな謎です。
まず宇野氏は「オペラ上演を観た事はなく」と書いてあるのですから、100%CDかLPを自宅のステレオ等でスピーカーを通して聴いているはずですが、この段階でこの文章の論理のおかしさが分かると思います。
通常のクラシック音楽の録音に際しても、多かれ少なかれ様々なミキシング処理で音量調整を施しているのは至極一般的なことですが、それは不問なのでしょうか?
ちなみにシュトックハウゼンはライヴ演奏に際して初期のピアノ曲も含めたほとんどすべての作品で、電気増幅を行っています。
シュトックハウゼンは自分の作曲した音を全てクリアーに聴かせるために、ミキシングには大きな注意をはらっていますが、弱音や特殊奏法は多少の強調はしても「大きく」ミキシングすることはありません。そして、それが「説明的」だから「耳の積極性が奪われる」という論理も不思議です。はっきりと聴こえるのならより細部まで積極的に聞き込むことが可能ですし、そのことによって和音の長い持続音に詰め込まれた微細な音色変化などを存分に味わうことが出来るのです。
宇野氏の記述を逆から解釈すると、「音響が不鮮明であれば、漠然とした印象や想像力で、積極的に音楽を聴ける」というおかしなことになってしまいます。
「音楽全体に躍動感が乏しい」という表現も疑問です。瞑想的で静かな部分も多いですが、常に音響がうごめいている躍動的な部分も多く、ごく一部の印象を全体の印象にしてしまっています。
さらにいえば躍動感があれば作品が素晴らしいのか、という疑問も残りますが、例えばブーレーズ、リゲティ、ベリオの一部の作品に見られる、躍動感はあるけれども、それ以上の深みは感じられない作品に関してはどう考えているのか興味があります。
はじめから「光」はあまり良い作品ではない、という結論ありきで作品を聴いているような気がしてなりません。
「木曜日」や「土曜日」のある部分に対して、チベット密教や真言密教の音楽を「下敷きにしたと考えられる」と曖昧な印象による「感想」を書いていますが、そういうことで紙面を埋めるのであれば、「カティンカの歌」で「チベットの死者の書」が下敷きになっているという明確な事実を例に挙げるべきだったでしょう。
January 22, 2008
レコ芸、音友のシュトックハウゼン追悼記事
現在発売中の「レコード芸術」「音楽の友」(いずれも2月号)にシュトックハウゼンの追悼記事がのっていますのでお知らせします。
「レコード芸術」には片山杜秀、沼野雄司の両氏による記事がのっています。その内容には部分的に疑問を感じる点があるものの、(某新聞の追悼記事と比べるとはるかに)「まともな」記事だと思いました。
シュトックハウゼンは、きちんと聴いた事もない作品に対しての筋違いな批判など「まともでない」論評をされることが普通なので、ベストではないにしても「まとも」であることはとても重要です。
ちなみに片山氏の「天国の扉の正しい開き方」の文章に私が撮影した写真(当ブログでも掲載したもの)が掲載されています。シュトックハウゼンが天国の扉の向こう側へ去っていくように見える写真です。
沼野氏の記事の中で「祈り」を日本で演奏する提案をしたことが書かれていましたが、実はカティンカから日本の○○が指揮する○○交響楽団で「祈り」を演奏したいと打診してきているが、その指揮者やオーケストラのことを知っているか、という問い合わせが私に来ていたので、おそらくそれが沼野氏の提案の企画だったのだろうと思います。
シュトックハウゼン側はオーケストラに1週間ほどのリハーサル期間を要求し、それでは経費が莫大なものになるので実現しなかった、と書いていますが、それは沼野氏の言う単なる「完璧主義」だけからではなく、本当にそれくらいのリハーサルを積まないとまともな演奏ができないからなのです。
「祈り」のスコアを見れば、弦楽器の配置が通常と左右逆だったり、オーケストレーションが極端に細かかったりとその演奏の困難さは一目瞭然です。
しかも各小節ごとにテンポが細かく変化する(1小節内で複数のテンポを持つ所もある)ので、指揮者にとってもその負担は極めて大きなものとなります。シュトックハウゼン自身が指揮をする時も数カ月前から「指揮の練習」をしていたことが伝えられていますし、あのエトヴェシュが初めてこの作品を演奏した時も、彼がそれまで指揮した中でもっとも指揮の難しい作品と述べたほどのものですから、その大変さは想像がつくと思います。
沼野氏も触れている通り、この作品は第一勧銀で委嘱されたのにも関わらず日本初演がいまだなされていません。もともと小澤征爾氏が指揮の予定だったのが、彼が作品のコンセプトに賛同できずキャンセルしたのですが、この作品はマイムを含む実演で見ないと真価は全く分からないので、いつの日か日本で演奏されることを期待します。
「音楽の友」の方の記事は日本におけるシュトックハウゼン研究の第一人者、清水穣氏のもので、某新聞記事に対する辛辣な批判から始まる痛烈な文章です。最後に、シュトックハウゼンにとっては「自分の音楽だけが絶対的に重要である」という記述がありますが、さらに補足すれば、「自分自身」よりも自分の「音楽」が重要であるといえます。
「自分はいつか死ぬけれども、自分の作品は後世に残っていく」という彼の発言を私は直接聞いた事がありますが、自分の作品を正しく伝えていくために、楽譜にしばしば楽譜本体よりも長大な解説を付し、楽譜もCDもすべて自分の監修の下制作し、キュルテンの講習会でアナリーゼや演奏法の指導を行っているのです。
その努力が今後どうなるかは分かりませんが、彼の勤勉な性格のお陰で、今年初演予定の委嘱新作はすべて完成していることには改めて恐れ入ります。もっとも遅い初演予定は10月です。
初演予定はないけれども、完成している作品はざっと10作品くらいあります。
January 18, 2008
「モメンテ」巨大スコア到着
シュトックハウゼンが死の直前になってようやく出版にこぎつけることのできた「モメンテ」の巨大なスコアがキュルテンより到着しました。

これが到着した時の荷物の状態です。郵便局の人、重そうに持ってきました。
大きさが分かるようにCDを一緒に置いてあります。

厚さが分かるようなアングルで撮ってみました。

スコアは巨大且つ綴じられていないので、特製のケースに収められています。
片手で持つには少々重いです。

内容物一覧です。
99枚の巨大な楽譜のページ(厚めの紙に片面印刷)と2冊の解説書が入っています。
一冊はドイツ語による原文の解説(23ページ)で、もう一冊は解説と楽譜の演奏指示の英訳(102ページ)となっていて、これを読むだけでもかなり頭脳を消耗します。

実際の楽譜のページです。
大きさの実感がこれではまだ分かりにくいのですが、新聞紙1ページぶんよりも二回りほど大きい感じです。
自筆譜をスキャンしたものとコンピュータで浄書されたものが適宜ミックスされていますが、1ページ1ページ極めて丁寧に作り込まれています。
それぞれのモメントの演奏順序が可変なので、楽譜が綴じられていないのですが、それぞれのページの中でも矢印などで細かいフレーズの演奏順序が可変な記譜になっていたり、短い挿入句の楽譜のためのスロット(実際に割れ目がある訳ではありません)があったりと、極めて複雑な迷路のようになってます。
このような特殊かつ複雑な仕様だとUNIVERSALも二の足を踏むのは当然で、作曲開始から出版まで40年以上掛かったのも納得できます。
こうした大きな仕事を死の直前に成し遂げた事実に、シュトックハウゼンの執念と職人気質を感じます。
January 13, 2008
シュトックハウゼン講習会2008
突然のシュトックハウゼンの逝去でどうなるか危ぶまれていた今年のシュトックハウゼン講習会は、「特別仕様」で行われることになりました。
詳細は以下のリンク(パンフレットのPDFへのリンクもあります)をご覧下さい。
http://www.stockhausen.org/stockhausen_courses.html
通常は一週間強に渡って行われていた本講習会は、今年は1週間延長し、「サウンド・プロジェクション」のためのコースがそこで行われます。
講師は、長年シュトックハウゼンのミキシング・ボードの傍らでアシスタントを務めていたBryan Wolfや、同じくエンジニアとして働いてきたIgor Kavulek(彼は2005年の来日公演にも同行しています)が務め、シュトックハウゼン作品に求められる、スピーカーなどの機材の設定、マイクの立て方やバランスの取り方などの講習が行われるようです。
パンフレットにも引用されているシュトックハウゼンの言葉によると、サウンド・プロジェクションは「指揮者よりも重要」で、その技術を「ピアニストのように練習しなくてはならない」重要な役割を持っていて、シュトックハウゼンがこの分野での後継者を求めている、と発言していたのは私も何度も直接聞いています。
そして、実際に、そうした側面をきちんと考慮しないと作品の面白さが聴衆にきちんと伝わらないことも様々な演奏を通じて痛感もしています。
そして、その期間のコンサートは毎晩ひたすら電子音楽が上演されます。
「習作I、II」「少年の歌」「コンタクテ」「テレムジーク」「ヒュムネン」「見えない合唱」「オクトフォニー」「金曜日の電子音楽」「水曜日の迎え」「水曜日の別れ」「宇宙の脈動」などといった初期から晩年までのほとんどすべての電子音楽が網羅されている濃密な内容になっています。
その後の一週間は毎年の内容とほぼ同じ内容ですが、声楽クラスの講師は、しばらく毎年来ていたテノールのフーベルト・マイヤーに代わり、バスのニコラス・イシャーウッドが久々に復活しています。
コンサートでは「KLANG10時間目:輝き」(ファゴット、ヴィオラ、クラリネット、トランペット、トロンボーン、オーボエ、テューバのために)のドイツ初演、「KLANG13時間目:宇宙の脈動」の再演、「KLANG3時間目:自然な持続時間」の24曲全曲演奏などが目を引きます。「カレ」の4チャンネルによるプロジェクションや、カティンカ、スージーの「ドリーム・チーム」で「アヴェ」の至福な演奏をまた聴けるのも楽しみです。
シュトックハウゼン自身によって行われていたコンポジション・セミナーは当然不可能なのですが、彼のアシスタントを務めていたこともあり、この講習会でもアナリーゼのレクチャーをやっていたRichard Toopが行うことになり、「モメンテ」「天国の扉」「宇宙の脈動」のアナリーゼを行うそうです。
加えて「宇宙の脈動」の極めて複雑なミキシングの補佐を行ったフライブルクのスタジオのスタッフによるレクチャーも行われるそうです。
驚くべきは、受講料の価格設定です。2週間参加しても、通常の1週間の受講料と同じ360ユーロです。当然滞在費も余分にかかりますが、それでもかなりお得な価格だと思います。
ちなみに、パンフレットのシュトックハウゼンの写真は背景を消しているだけですが、天国のミキシング・ボードに座っているかのように見えます。
毎年、受講生全員からのシュトックハウゼンへのプレゼント(寄せ書きなど)、という企画がありましたが、今年からはそうしたものも無くなるのですね。ちょっと悲しいです。
January 04, 2008
シュトックハウゼンCDガイド更新
手入れが滞っていた「シュトックハウゼンCDガイド」を久々に更新しました。
10番台のCDを中心に簡単な解説をつけました。
それ以外のものにも細かく関連CDの情報を加えていたりしてます。
URLはこちらです。
http://tierkreis.web.infoseek.co.jp/kstcd/
December 18, 2007
浅田彰氏のシュトックハウゼン追悼記事への反論
作曲家の伊東乾氏が、日経のウェブサイト上の記事で、読売新聞の浅田彰氏のシュトックハウゼン追悼記事を批判する文章を書いています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20071214/143133/?P=5
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20071214/143133/?P=6
伊東氏とのお付き合いは決して長くありませんが、今年の双子座三重奏団のライヴで伊東氏の新作初演を行い、今年のキュルテンでの講習会でも一緒でした。
伊東氏にとってシュトックハウゼン講習会は今回が初めての参加でしたが、様々な面で大きな感銘を受けている様子が窺えました。
浅田氏の追悼記事は、シュトックハウゼンへの誤解と偏見に満ちた醜悪な記事で、追悼どころか故人を冒涜しているような印象すら受けましたが、このような形で反論が出ることによって、少しでも誤解や偏見がなくなる事を願います。
December 17, 2007
シュトックハウゼンの葬儀
シュトックハウゼン講習会に参加した事のあるある人のウェブサイトで、シュトックハウゼンの葬儀の様子が細かく書かれていました。
葬儀、といっても神父がでてきてお祈り、などという一般的なスタイルではなく、墓地のそばのチャペルに安置されたシュトックハウゼンの遺体に各人が自由にお別れを言う、という方式だったようです。
チャペルの中央に置かれた棺の中に、例のメキシコの白いシャツと、この日のために用意されていた白いカーディガンを着たシュトックハウゼンの遺体が収められ、そのまわりには100本程のろうそくや花が飾られ、非常に美しい雰囲気を醸し出していたようです。
チャペルの中では4チャンネルのスピーカーから「少年の歌」から「KLANG2時間目:喜び」に至るまでの様々な彼の作品が流されていたとの事です。
始めの妻であったDoris、子供たちのSimon, Sujaら、彼の多くの家族も当然ながら集合し(Markusはチリにツアー中のため不参加)、シュトックハウゼン講習会の講師を務めたNicholas Isherwood, Alain Louafiに加え、エトヴェシュやエマールなど彼の作品を演奏した事のある音楽家も訪れたそうです。
「祈り」を初演以来演じ続けているAlain Louafiは、ベジャール、シュトックハウゼンという彼の恩師といえる人物の立て続けの死去にショックを隠せないようです。
さらに細かい内容は以下のサイトをご覧下さい。
たまたま見つけたシュトックハウゼンの墓石の写真(埋葬前)もありますが、飾り気の無い(しかし美しい形の)石の自然な感じが印象的でした。
話は変わりますが、BBCで放送されたシュトックハウゼンの追悼番組、なかなか好内容です。
ブーレーズ、マルクス・シュトックハウゼンら、関係者のインタビューを沢山聞けます。
以下のサイトで1週間限定で聴く事ができますのでお早めにどうぞ。
http://www.bbc.co.uk/radio3/musicmatters/pip/h74nb/
December 14, 2007
「グルッペン」リハーサルの記録
昨日、シュトックハウゼンは無事に埋葬されたはずですので、追悼ムードから少し変えてみる事にしましょう。
とある方から紹介してもらったのですが、今年のルツェルン音楽祭で演奏されたシュトックハウゼンの「グルッペン」にホルン奏者で参加されていた方のブログの内容がとても興味深かったので、以下にリンクを張っておきます。
http://ausdrucksv.exblog.jp/6574642/
各ページの下まで行ったら、「前のページ」とあるところをクリックすると、本番の様子まで行き着けます。
シュトックハウゼンとこの作品の演奏に関わったエトヴェシュ、ブーレーズの絡んだ企画ですので、このブログで詳細に書かれているリハの行い方、楽譜の細部までどのようにこだわるか、という内容は、すべてシュトックハウゼンがどのように楽譜の細部にこだわっているか、ということにほぼ等しいと言えます。
そして、リハーサルがこなれてきて、何度もの分奏稽古のあとの全体の稽古になった時に、初めて譜面を見た時に音楽とは思えなかった曲が、「何だかとても良い曲に聴こえてもきた」という感覚にまで到達する様子が、体感できるようなレポートにまとまっているところも面白いです。
通常のオーケストラのリハーサルの現状から考えると、気の遠くなるような稽古を重ねなくてはならないのですが、私がキュルテンで体験した事にも通ずるところがあり、大きな共感を覚えました。
日本ではサントリー・ホールで演奏される予定があるようですが、まずあそこで、3群のオケをきちんと客席の左、中央、右に分離したステージで演奏できるのでしょうか(舞台上で3つオケを並べる最もシュトックハウゼンが嫌う最悪な方法ではなく)?
そして、このブログでも紹介されているような(そしてスコアにも記載されています)長時間の稽古時間が確保できるのでしょうか?
半信半疑なところもあるのですが、このような好条件で演奏される事を願います。
December 12, 2007
シュトックハウゼン旅立ちの瞬間

シュトックハウゼン長年のパートナーであるフルート奏者Kathinka Pasveer氏の書いたシュトックハウゼンの最期の模様を記したメールの存在は以前の記事でお伝えしていたかと思いますが、カティンカ本人より転載の許可をもらいましたので、日本語訳したものを以下に掲載します。
できるだけ原文に忠実にしていますが、流れを分かりやすくするため最小限の編集を行っていることをご了承下さい。([ ]内は訳者による補足)
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◆ 2007/10/9
今日は、私たち全員にとって記念すべき日でした。作曲後45年にして遂に「モメンテ」のスコアが印刷工場に送られました!私たちは、このスコアの[出版準備の]ために丸二年を費やしたのです。そして、「モメンテ」のヨーロッパ版のスコアもあと2週間で完成予定です。どちらもとても巨大で美しいスコアです(1ページ66×48cmととても大きく、特製のケースに収められます)。
「モメンテ」の出版は、シュトックハウゼンがかつて体験した中でもっとも困難な道のりでした。自筆譜をスキャンして、全て書き直すことなくコンピュータ上で訂正ができるコンピュータ時代に感謝しなくてはなりません。アントニオはこの作業をこの2年間続け、スザンヌは100ページに及ぶ演奏指示を[英語に]翻訳し、私はそれをタイプしました。
シュトックハウゼンは今、オーケストラのための「7つの星座」(来年ボローニャでモーツァルト管弦楽団によって初演されます)を作曲中で、これで12宮全てのメロディーがオーケストラで演奏できることになります[訳注]。
◆ 2007/12/8
シュトックハウゼンは、「モメンテ」が出版される前に死んでしまう訳にはいかない、といつも言っていました。先週、「モメンテ」のオリジナル版のスコアが印刷工場から届きました。ヨーロッパ版のスコアも本日到着する予定です。
シュトックハウゼンは、亡くなる日の前の晩にオーケストラ版の「双子座」の作曲を完成させ、楽譜にすべての小節番号を書き込んだ後、ベッドに入りました。翌朝7時、彼は私たちにこう言いました。「Ein ganz neuer Zeit bricht an, ich habe eine ganze neue Ebene des Atmens gefunden.(新しい時が始まった。私は全く新しい呼吸の方法を見つけたのだ。)」
彼はこの感覚に興奮して、できるだけ素早く起き上がりたい、と言いました。そして、彼が立ち上がると同時に、彼は倒れてしまいました。彼の心臓の鼓動がそこで止まったのです。この美しい体験の中で、彼は、苦しむことも病に冒されることもなく彼の肉体から離れていったのでした。何という旅立ち方なのでしょう!
彼はずっと以前から、自分がもし死んだら、死んだことを誰にも知らせずに、「光の家」と名付けられた木の[作曲]小屋で遺体を三日三晩そっと安置して欲しいと書き残していました。そこで彼は沢山の作品を作曲したのです。そして三日後に、私たちは友人や報道関係者に訃報を知らせました。
来年の初演のために委嘱された作品のすべては完成していて、作品表の最後の作品はフルートと電子音楽のための「KLANG21時間目・楽園」となりました。
[訳注]2004年に「5つの星座」というタイトルで「ティアクライス」からの5つのメロディー(乙女座〜山羊座)のオーケストラ版が作曲された。「7つの星座」はここで作曲されなかった残るメロディー(水瓶座〜蟹座)のオーケストラ版であり、この両者を組み合わせることで12のメロディーからなる「ティアクライス」のオーケストラ版が完成したことになる。
(訳・松平敬)
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明日13日はシュトックハウゼンの埋葬が行われます。
それに先立ってセレモニーが行われるようですが、日本時間では午後6時から午後9時までとなります。
スケジュールの都合さえ付けばキュルテンに行きたかったのですが、さすがに無理なので、私は、その時間に合わせて、何か追悼になることをしようと思います。
ちなみに上の写真は「天国への扉」を昨年演奏した時のリハの模様です。
シュトックハウゼンが少女にどうやって動くか説明しているところですが、扉の向こうの世界へ歩いていくようにも見えます。きっとこういう感じで天国へと旅立ったのでしょう。
December 10, 2007
三日三晩
シュトックハウゼンは生前から、自分が死んでも三日間は誰にもそのことを知らせずに、「光の家」と名付けた作曲小屋(そこで数々の名作が作曲されました)に遺体を安置しておいて欲しい、という意思を示していて、実際その通りに行われたため、死去から報道まで3日間のタイムラグが生じたようです。
日本での報道を見ていると、たった数行の記事の中に、例のNYテロ事件に関する発言がいまだに誤解されたまま引用されていたり、悲しい気分になりますが、自分が死んだらその種の報道が沸くように出てくることを見越したシュトックハウゼンが、せめて3日間はそっとしておいて欲しい、とささやかに願ったのでしょう。
周辺からの情報では、「モメンテ」が出版される前に死ぬ訳にはいかない、などと発言し、この出版準備には尋常ではない意気込みを感じていたようで、印刷会社から仕上がった楽譜が届いて1週間、さすがの御大も気が抜けてしまったのではないでしょうか。
この作品自体が40年前に完成したもので、おそらく印刷技術の問題でずっと出版できないでいたものが、2年間の集中的な出版準備(楽譜の細部までに渡る校正、演奏指示の翻訳など)をかけてようやく出版となると、LICHTの25年にわたる作曲年数をはるかに越える長い道のりだったことになります。
この作品に折り込まれた、作曲当時の離婚、再婚というプライベートな確執も、作品に対する思い入れを強くしていたのでしょう。
ちなみに来年は生誕80年を記念して、数々のコンサートのオファーを受けていたようですが、その大半は断ったそうです。理由はKLANGの作曲に集中したいから、ということです。残る22〜24時間目を来年完成させようと思っていたのではないかと想像すると、無念でなりません。
ちなみにシュトックハウゼンが亡くなった直後に、公式HPにアクセスできなくなったとの、クレームのメールがいくつも届き、その内あるメッセージには「シュトックハウゼンは宇宙空間に消えてしまったのか?」というものもあったようです。HPの管理人が調べると、公式HPのサーバ使用に関する更新期限だったにも関わらず、その手続きを怠っていたため、アクセスができなくたった、との真相が判明しましたが、偶然にしろ、面白い一致だと思います。
December 09, 2007
シュトックハウゼン追悼文注釈
シュトックハウゼンの死去に対して書きたいことは色々あるのですが、その辺は気持ちの整理がある程度ついてから、ということで、昨日の記事でも引用した公式アナウンスの内、作品名なども含めた詩的な部分のごく簡単な注釈をつけておきたいと思います。
それによってこの文章への理解も深まると思います。
こういう「作業」の方が個人的にも感傷的になりすぎるのを避けることができますので。。
…for love is stronger than death.
#このフレーズは60年代の大作にしてシュトックハウゼンの死去寸前に出版されたMOMENTEで使用されているテキストです。
IN FRIENDSHIP and gratitude for everything that he has given to us personally and to humanity through his love and his music,
#IN FREUNDSCHAFT(IN FRIENDSHIP)「友情に」は70年代後半に作曲されたソロ作品で管楽器、弦楽器などさまざまな版があり頻繁に演奏されている作品です。
we bid FAREWELL to Karlheinz Stockhausen, who lived to bring celestial music to humans, and human music to the celestial beings, so that Man may listen to GOD and GOD may hear His children.
#ABSCHIED(FAREWELL)「別れ」はLICHTの7つのオペラの終演後にロビーなどで演奏される音楽です。瞑想的な電子音楽であることが多いです。
On December 5th he ascended with JOY through HEAVEN'S DOOR,
#FREUDE(JOY)「喜び」はKLANG2時間目にあたる作品でハープ2台のために作曲されました。
#HIMMELS-TÜR(HEAVEN'S DOOR)「天国への扉」はKLANG4時間目で特別に作られた扉を様々に叩く曲です。
#12月5日はたまたまですがモーツァルトの命日と同じです
in order to continue to compose in PARADISE with COSMIC PULSES in eternal HARMONY, as he had always hoped to do:
#PARADIS(PARADISE)「楽園」はKLANG21時間目で、フルートと電子音楽のための作品です。
#COSMIC PULSES「宇宙の脈動」はKLANG13時間目で、8チャンネルの電子音楽です。
#HARMONIEN(HARMONY)「ハーモニー」はKLANG5時間目で、バス・クラリネット、フルート、またはトランペットのための作品です。
You, who summon me to Heaven, Eva, Mikael and Maria, let me eternally compose music for Heaven's Father-Mother, GOD creator of Cosmic Music.
#Eva, Mikael, Maria: エヴァとミカエルはLICHTの主人公で、聖母マリアの名前はこの最終作「日曜日」のテキストに登場します。
May Saint Michael, together with Heaven's musicians in ANGEL PROCESSIONS and INVISIBLE CHOIRS welcome him with a fitting musical GREETING.
#ENGEL-PROZESSIONEN(ANGEL PROCESSIONS)「天使の行列」はLICHTの最終作「日曜日」の第2幕で7群の合唱の為の作品です。
#UNSICHTBARE CHÖRE(INVISIBLE CHOIR)「見えない合唱」はLICHTの最初に完成された「木曜日」の中で生演奏の背景で演奏される、合唱の録音をミックスして作られた8チャンネルの電子音楽です。
#GRUSS(GREETING)はLICHTの7つのオペラの開演前にロビーなどで演奏される音楽です。
#つい先程、シュトックハウゼンのまさに最期の瞬間がどのようであったかの話を知ったのですが、あまりに感動的で思わず冷静さを失ってしまいました。プライベートな出来事でもあるので現時点では公表は控えますが、安らかで、シュトックハウゼンらしい旅立ちであったということだけはお知らせしておきたいと思います。
絶筆はオーケストラ版のTIERKREISの中の「GEMINI 双子座」(亡くなる日の前の晩に完成)、作品表の最後の作品はKLANG21時間目「PARADIS 楽園」となるそうです。
偶然ですが、昨晩就寝前に、シュトックハウゼンから贈呈されたGEMINIのオルゴールを追悼として久々に鳴らしてみました。
December 08, 2007
シュトックハウゼン氏逝去
80歳を目前にしてシュトックハウゼンが12月5日キュルテンの自宅で逝去しました。
今年のキュルテンでの講習会の様子を見てもとても元気でしたし、最近も「モメンテ」のスコアの出版準備など精力的に働いていた様子だったので、あまりに突然でびっくりしています。
来週13日キュルテンの墓地に埋葬されるそうです。
リンク:シュトックハウゼン公式HP
以下、シュトックハウゼン音楽財団からのメールを貼り付けておきます。
メールの件名が「Stockhausen Farewell」だったので見た瞬間に内容の予想が付いてしまいましたが。。。
シュトックハウゼンの様々な曲名(大文字のもの)の取り込まれた文章にシュトックハウゼンへの愛を感じます。
The composer Karlheinz Stockhausen passed away on December 5th 2007 at his home in Kuerten-Kettenberg and will be buried in the Waldfriedhof (forest cemetery) in Kuerten.
He composed 362 individually performable works. The works which were composed until 1969 are published by Universal Edition in Vienna, and all works since then are published by the Stockhausen-Verlag. Numerous texts by Stockhausen and about his works have been published by the Stockhausen Foundation for Music.
Suzanne Stephens and Kathinka Pasveer, who have performed many of his works and, together with him, have taken care of the scores, compact discs, books, films, flowers, shrubs, and trees will continue to disseminate his work throughout the world, as prescribed in the statutes of the Stockhausen Foundation for Music, of which they are executive board members.
Stockhausen always said that GOD gave birth to him and calls him home.
****
…for love is stronger than death.
IN FRIENDSHIP and gratitude for everything that he has given to us personally and to humanity through his love and his music, we bid FAREWELL to Karlheinz Stockhausen, who lived to bring celestial music to humans, and human music to the celestial beings, so that Man may listen to GOD and GOD may hear His children.
On December 5th he ascended with JOY through HEAVEN’S DOOR, in order to continue to compose in PARADISE with COSMIC PULSES in eternal HARMONY, as he had always hoped to do: You, who summon me to Heaven, Eva, Mikael and Maria, let me eternally compose music for Heaven’s Father-Mother, GOD creator of Cosmic Music.
May Saint Michael, together with Heaven’s musicians in ANGEL PROCESSIONS and INVISIBLE CHOIRS welcome him with a fitting musical GREETING.
On behalf of him and following his example, we will endeavor to continue to protect the music.
Suzanne Stephens and Kathinka Pasveer
in the name of the world-wide family of musicians who love him, together with everyone who loves his music.
****
On Thursday, December 13th 2007, from 10 a.m. to 1 p.m. it will be possible to personally say farewell to Karlheinz Stockhausen in the chapel of the Waldfriedhof in Kuerten (Kastanienstrasse).
A commemorative concert will take place soon at the Sülztalhalle in Kuerten. Programme, time and date will be specially announced.
December 07, 2007
「天国への扉」動画
KLANG4時間目「天国への扉 HIMMELS-TÜR」の非常に鮮明でかなり長い動画がシュトックハウゼンの公式サイトにアップされています。
以下のURLから上のほうに動画ファイルへのリンクを見つけることが出来ます。
http://www.stockhausen.org/stockhausen_multimedia.html
特製の扉を様々な方法で叩きまくる作品なので、このように動画で見ておくことも作品理解の上で重要です。
その上でCDでもう一度音だけで、音色の微細な変化に注目して聞き直すと新しい発見があるでしょう。
November 28, 2007
KLANGは「21時間目」まで完成!
シュトックハウゼンの7つのオペラ「光」に続くプロジェクト、1日の24時間を音楽化しようとするKLANGが実はすでに21時間目まで完成していることが判明しました。
作曲年のない11,12時間目は作曲中かと思いますが、残るは22~24時間目の3曲のみ、このペースで行くと2008年に全曲が完成しそうな勢いです。
詳細は以下のPDFファイルの27〜28ページ目をご覧下さい。
http://www.stockhausen.org/list_scores_books_2007.pdf
以下に日本語に訳してまとめたものを掲載します。
14〜21時間目は13時間目「宇宙の脈動」の電子音楽24のレイヤーを3層ずつにばらしてミキシングし直し、そのレイヤーの音域に近い楽器または歌手のソリストが同時に演奏する形になっているようですが、不思議な響きのタイトルはUrantia Bookから取っていると思われます。
「1時間目:昇天 HIMMELFAHRT」(2004/05)[37分]ソプラノ、テノール、オルガンのために CD83
(2005年5月ミラノ大聖堂で初演)
オルガン・パートは左右の手で同時に異なるテンポで演奏しなくてはならない。
オルガン・パートをシンセサイザーで置き換えた版もある。
リンク:公式ページ上の簡単な解説
「2時間目:喜び FREUDE」(2005) [41分]2台のハープのために CD84
(2006年6月ミラノ大聖堂で初演)
2人のハーピストは演奏しながら歌も歌う。歌詞は24行のVeni Creator Spiritusで各行がこの作品の24の音楽的モメントに対応している。
リンク:公式ページ上の簡単な解説
「3時間目:自然の持続時間 NATÜRLICHE DAUERN」(2005/06)[約140分]ピアノのために CD85
(2006年2月NYにて1曲目、2006年7月ドイツ、キュルテンにて2-15曲目を初演。
2007年7月リスボンにて16-24曲目を初演。)
ピアノの持続音の自然な減衰時間やピアニストの呼吸の長さなどに基づいた非メトロノーム的テンポでリズムが決められ、それ自体が24の作品から構成される。
「4時間目:天国への扉 HIMMELS-TÜR」(2005)[約28分]打楽器奏者と子供のために CD86
(2006年6月イタリア、ルーゴで初演)
6つの異なる素材でできた木のドアを打楽器奏者が様々な方法で叩き続ける異色作。
「5時間目:ハーモニー HARMONIEN」(2006)[約15分]フルート、バス・クラリネット、またはトランペットのために
(2007年7月ドイツ、キュルテンにて初演)
管楽器の広音域にまたがる素早いアルペッジョの加速や減速によってメロディーとハーモニーの領域をつなぐ。
「6時間目:美 SCHÖNHEIT」(2006)[約30分]バス・クラリネット、トランペット、フルートのために
(2009年10月リスボンにて初演予定)
「7時間目:バランス BALANCE」(2006/07)[約30分]バス・クラリネット、イングリッシュ・ホルン、フルートのために
(2008年8月ケルンにて初演予定)
「8時間目:至福 GLÜCK」(2006/07)[約30分]ファゴット、イングリッシュ・ホルン、オーボエ、シンセサイザーのために
「9時間目:希望 HOFFNUNG」(2006/07)[約35分]チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンのために
(2008年8月ケルンで初演予定)
「10時間目:輝き GLANZ」(2006/07)[約40分]ファゴット、ヴィオラ、クラリネット、トランペット、トロンボーン、オーボエ、チューバのために
(2008年6月アムステルダムで初演)
「11時間目:忠誠 TREUE」[約30分]バス・クラリネット、バセット・ホルン、Es管クラリネットのために
「12時間目:覚醒 ERWACHEN」[約30分]チェロ、トランペット、ソプラノ・サックスのために
「13時間目:宇宙の脈動 COSMIC PULSES」(2006/07)[32分]電子音楽 CD91
(2007年5月ローマにて初演)
24層のパルス風(ただししばしばテンポの変化を伴う)のメロディーのループが8チャンネルの空間で複雑に重なりうごめく強烈な電子音楽。
リンク:公式HP上の曲目解説
「14時間目:HAVONA」(2007)[24分10秒]バスと電子音楽のために
(layers 24 - 23 - 22 from COSMIC PULSES)
(2009年1月パリで初演予定)
「15時間目:ORVONTON」(2007)[24分]バリトンと電子音楽のために
(layers 21 - 20 - 19 from COSMIC PULSES)
「16時間目:UVERSA」(2007)[22分40秒]バセット・ホルンと電子音楽のために
(layers 18 - 17 - 16 from COSMIC PULSES)
「17時間目:NEBADON」(2007)[21分40秒]ホルンと電子音楽のために
(layers 15 - 14 - 13 from COSMIC PULSES)
「18時間目:JERUSE」(2007)[20分40秒]テノールと電子音楽のために
(layers 12 - 11-10 from COSMIC PULSES)
「19時間目:URANTIA」(2007)[19分40秒]ソプラノと電子音楽のために
(layers9-8-7fromCOSMIC PULSES)
(2008年11月ロンドンで初演予定)
「20時間目:EDENTIA」(2007)[18分40秒]ソプラノ・サックスと電子音楽のために
(layers6-5-4fromCOSMIC PULSES)
(2008年8月ハンブルクで初演予定)
「21時間目:楽園 PARADIS」(2007)[18分]フルートと電子音楽のために
(layers3-2-1fromCOSMIC PULSES)
November 25, 2007
「モメンテ」スコア遂に出版
シュトックハウゼンの1960年代の集大成といえる演奏時間2時間の大作「モメンテ」が完成からほとんど半世紀たって遂に出版されました。
初期から最新作に至るまでほとんどの全ての作品の楽譜が出版されているのに、重要作である「モメンテ」だけがいままで未出版だったのは奇妙でしたが、生誕80年を記念しての今回の出版でその穴が埋められました。
来年にはリスボンでこの「モメンテ」が演奏されるようです。
この作品はあるルールに従って各部分の演奏順序、挿入句の有無を確定して、その都度の演奏用ヴァージョンを作成しなくてはなりませんが、オリジナルのバラバラの状態の楽譜、シュトックハウゼン出版のCD(旧録音の方)で使用されているヨーロッパ版の確定された楽譜の二種類が同時に出版されています。
早速楽譜を注文しようとしたら、オリジナル版もヨーロッパ版も共に490ユーロ(!)というゴージャスな価格設定でビックリしました。
かなり分厚いカラー写真満載の豪華な楽譜でも200ユーロ前後だったので、このモメンテの楽譜は相当に豪華な仕様になっているかと思いますが、なんとかして手に入れたいものです。
詳しい情報は以下のページをご覧下さい。
http://www.stockhausen.org/momente_new_2008.pdf
November 09, 2007
KLANG最新情報
シュトックハウゼンの公式HPにコンサート情報が続々追加されていますがKLANGの新作になる7時間目、10時間目のタイトル、編成も判明しましたので以下にまとめておきます。おそらくKLANG全24曲の半分はもう作曲済と思われます。
それにしても10時間目の編成はかなり奇妙です。
KLANG以外の新作としては、クラウディオ・アバドより生誕80年を記念して、TIERKREISのオーケストラ版の委嘱があったことが最近アナウンスされました。
「1時間目:昇天 HIMMELFAHRT」(2004/05)ソプラノ、テノール、オルガンのために
(2005年5月ミラノ大聖堂で初演)
オルガン・パートは左右の手で同時に異なるテンポで演奏しなくてはならない。
オルガン・パートをシンセサイザーで置き換えた版もある。
リンク:公式ページ上の簡単な解説
「2時間目:喜び FREUDE」(2005) 2台のハープのために
(2006年6月ミラノ大聖堂で初演)
2人のハーピストは演奏しながら歌も歌う。歌詞は24行のVeni Creator Spiritusで各行がこの作品の24の音楽的モメントに対応している。
リンク:公式ページ上の簡単な解説
「3時間目:自然の持続時間 NATÜRLICHE DAUERN」(2005/06)ピアノのために
(2006年2月NYにて1曲目、2006年7月ドイツ、キュルテンにて2-15曲目を初演。
2007年7月リスボンにて16-24曲目を初演。)
ピアノの持続音の自然な減衰時間やピアニストの呼吸の長さなどに基づいた非メトロノーム的テンポでリズムが決められ、それ自体が24の作品から構成される。
「4時間目:天国への扉 HIMMELS-TÜR」(2005)打楽器奏者と子供のために
(2006年6月イタリア、ルーゴで初演)
6つの異なる素材でできた木のドアを打楽器奏者が様々な方法で叩き続ける異色作。
「5時間目:ハーモニー HARMONIEN」(2006)フルートまたはバス・クラリネットのために
(2007年7月ドイツ、キュルテンにて初演)
管楽器の広音域にまたがる素早いアルペッジョの加速や減速によってメロディーとハーモニーの領域をつなぐ。
「6時間目:美 SCHÖNHEIT」バス・クラリネット、トランペット、フルートのために
(2008年10月リスボンにて初演予定)
「7時間目:バランス BALANCE」バス・クラリネット、イングリッシュ・ホルン、フルートのために
(2008年8月ケルンにて初演予定)
「10時間目:輝き GLANZ」ファゴット、ヴィオラ、クラリネット、トランペット、トロンボーン、オーボエ、チューバのために
(2008年6月アムステルダムにて初演予定)
「13時間目:宇宙の脈動 COSMIC PULSES」(2007)電子音楽
(2007年5月ローマにて初演)
24層のパルス風(ただししばしばテンポの変化を伴う)のメロディーのループが8チャンネルの空間で複雑に重なりうごめく強烈な電子音楽。
October 30, 2007
KLANG13時間目「宇宙の脈動」
今年度のシュトックハウゼン講習会で最も衝撃を受けた電子音楽の新作「宇宙の脈動」のCDがキュルテンより到着しました。
8チャンネルの電子音楽ですが、低音から高音までの各音域に分かれた24層のメロディーのループ(それぞれテンポが異なり、独自のピッチ・ベンド、テンポ変化を伴う)が低音からどんどん積み重なっていくだけでなく、その24層が各部分で空間移動の仕方も変えるので(全部で241種類の空間移動が行われる)、キュルテンで8チャンネルのプロジェクションで聴いた時には平衡感覚を失うような異様な感覚に陥りました。
ローマで世界初演された時にテクノやヒップ・ホップのファンから猛烈な反響があったこともうなずけるドラッグ的な音響といえるでしょう。
CD化に当たってこの複雑な音響がステレオにミックスされることにより、当然、空間移動の効果は実演の100分の1に押さえられ、8チャンネルですら細部が混濁して聴こえる音響の複雑さが(作曲者もミキシングをやり直したいようです)ステレオに圧縮されることによりさらに細部は聴き取りにくくなり、実演で聴いた時の100分の1の感銘しか受けませんでしたが、それでも集中して聴いていると体が酔うような感覚になりますし、シュトックハウゼンの電子音楽の新たな傑作に加えられ得ることは間違いありません。
この音塊の密度の濃さを喩えるとなると、クセナキスの「エールの伝説」くらいしか比較対象が思いつきませんが、クセナキス作品と決定的に異なるのが全てがメロディーから構成されているということです。
24層のメロディーが同時に演奏される部分(約10分間)では、個々のメロディーを聴き取る事は極めて困難で、表面的にはクセナキス的な音響にも近いのですが、集中して聞くとメロディーの断片の集積であることがなんとか認知できます。
32分の作品本体の後に「付録」として24のそれぞれのレイヤーの冒頭90秒を、独立して聴けるようになっていますが、レイヤー24から1へと聴き進めると、音域がだんだん上昇、テンポもだんだん加速(1音の基本持続が6.4秒から0.03秒へ)していく様子が手に取るように分かります。
24のそれぞれのメロディーの構成音は1〜24音とすべて異なっていますが、例のKLANGの24音セリーから導き出されていることが一聴して分かりますし、ループされたメロディーが前述の通り不規則なピッチ・ベンドやテンポ変化(このカーブも3分ごとにセリエルに交替する)を伴うため決して単調さに陥ることはありません。
キュルテンで包み込まれるような音響条件で聴いた時には暴力的にも聴こえた音の密度が、ステレオで「客観的に」聴いて見ると、最も複雑な箇所ですら極めて美しく響いていることに初めて気付きました。
October 05, 2007
ヒリアーの「シュティムング」新録音
ポール・ヒリアーによるシュトックハウゼンの「シュティムング」の新録音が発売されました。
ヒリアーは以前にもハイペリオン・レーベルに同曲を録音してそちらも好内容ですが、この新録音もかなりのレベルに達しています。ちなみにこの録音ではヒリアーはディレクターとしてのみの役割で歌ってはいません。最新の録音技術を生かし、この作品で最も重要な、虹のような倍音の動きを見事に捉えています。
母音の変化〜倍音によるメロディー〜口笛や気息音によるメロディー、といった音色の変化が絶品です。
シュトックハウゼン出版から発売されている初演者による録音は、もっとオン・マイクでリバーブもかなり少なめで目の前で演奏されているような音像ですが、このヒリアー盤ではリバーブがかなり多めでやや遠くから演奏を聴いているような音像になっています。
スコアの指定では舞台中央で6人の歌手が輪になって演奏し、マイクで増幅された声が聴衆のまわりに設置された6つのスピーカーから再生されるようになっていますが、その聴衆が音に包まれるような状況を考えると、このミキシングには疑問を感じます。
とはいえ、シュトックハウゼン自身とも深くやり取りをした上で臨んだ録音だけあって、前述の倍音の響きなどはシュトックハウゼン出版盤を上回る部分もあり、一聴の価値があるといえるでしょう。

